以前、ヨーロッパを旅行した时、こんな経験をした。観光バスに乗ってあちらこちら见て回った时のことである。私は三歳の孙を抱いていた。バスに乗り合わせた四十人ばかりの乗客はみな外国人だった。子供をかわいがる人たちだとみえて、私のそばを通る时に、孙の颜を见て、にっこり笑ったり、手を振ったり、孙の手を握ったり、あるいは自国の言叶で声をかけたりしてくれる。
そのうちに、一人の中年の妇人が突然孙の方に颜を寄せて、日本语で「今日は」と言った。意外なことに私はびっくりしてしまった。いかにも人の良さそうな笑颜だった。おそらくその人は日本に来たことがあるのだろう。日本语を、覚えていて、しかも、私たちが日本人であることを知って、わざわざ日本语であいさつをしてくれたのだろう。私はこういう人たちに大変亲しみを感じた。
こんな时、日本人だったらどうだろうか。知らない人同士がバスに乗り合わせたら、お互いにあいさつをするだろうか。どちらかと言うと、あまり话をしないのではないかと思われる。殊に私たちみたいな子供连れの外国人がいたら、その人たちに対してどんな态度をとるだろうか。おそらく积极的に声をかける人は少ないだろう。知らない人と话すのは耻ずかしい、めんどうだなどと大部分の人が思ってしまうのではないか。
例えば、こんなこともあった。ある日の朝、ホテルの中庭を散歩していたら、年配の夫妇に会った。すれちがう时に、「グッドモーニング」と声をかけられた。私は実は、黙って通り过ぎようと思っていたから、向うからあいさつをされて、どきどきしてしまった。
むろん何でも外国人のまねをした方がいいと考えているわけではないが、出会った时に、声をかけるのは大事なことだと思われる。黙って头を下げても、目礼をしても、相手にはこちらの気持ちが伝わるだろう。しかし、言叶を添えた方がいっそう気持ちが通じるのではないだろうか。朝、出会った时、元気な声で「おはようございます」と言えば、相手も気分がいいだろう。感谢をする时に、心をこめて「ありがとうございます」と言えば、相手も喜ぶだろう。言叶は、自分の心を相手に伝えるものである。できるだけはっきり言叶に出してお互いに心を伝え合いたいものである。